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[日本映画]それでもボクはやってない: Twitter


英語タイトル: Soredemo boku ha yattenai
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最新作品評価

2011/11/20 とても良い(+2 pnt) by ペク
様々な見方が出来る奥が深い作品でした。この作品を見て痴漢冤罪って怖いなーと受け取るだけでは、本作のメッセージを十分に受け取ったとはいえないかと思います。

本題に入る前に、少し頭に入れておいて欲しい事があります。この作品を見ていると、「十二人の怒れる男」という作品を思い出します。今作が「推定有罪」を扱った作品だとするならば、十二人の怒れる男の方は「推定無罪」を扱った作品です。この両方の作品を見た方にどちらの考え方が正しいかと問えば、おそらく99.9%の人が推定無罪を推す事でしょう。しかし、それだけではまだ足りません。この両者の考え方のどこが違うのか、どこが正しくてどこが間違っているのかということを考えないことには、本質を見誤ってしまいます。

この作品で一番重要な点、それは主人公が実際に痴漢をしたかどうかをわからなくした点だと思います。それは、既に下の方で挙げている論客さんもいらっしゃいますが、もし実際にやっているという方向性から見ても、全く違和感の無い脚本に仕上がっていることから見ても顕著に表れています(これを偶然というには少々出来すぎだと思います)。もし、実際に痴漢を働いていないという事が完全にわかる描写がどこかにあるのならば、痴漢冤罪って怖いなーだけでも全く問題はありません。しかし、実際に痴漢したかどうかを明示しなかった場合、この先の描写の意味が全く違ってきます。

本作は、意図的に冤罪を匂わせる描写、主人公に肩入れしたくなる描写をふんだんに盛り込んでいます。しかし、作品を見ている私たち視聴者からは実際にそれが本当なのかどうかということを、実際に証明する手立ては何もありません。大事なことなのでもう一度言います。彼が実際に痴漢をしたかどうかということは、視聴者からは決して解らないのです。

ここから、本作のメッセージが透けて見えます。冤罪が起きる時、それは人を裁いているという意識が薄くなり、真実を追究する気持ちを忘れた時なのではないでしょうか。最終的に到達するものが真実であるならば、冤罪は起こりようもありません。冤罪を撲滅するために一番必要なものは、真実に到達するまでどこまでも追及し続けるというその姿勢ではないのでしょうか。そのことを忘れ、製作者が提示したもっともらしい主人公に肩入れさせたくなる描写の数々を鵜呑みにし、安易に主人公が冤罪被害にあって可哀そうという気持ちを持つことは、私たちが散々嫌悪感を持った、あの最初から犯人だと「決め付けて」捜査を行った警察の態度と本質的なところでは何も変わらないのではないかということを本作は言っているんです。
もし、万が一にあの主人公が判決どおり実際に痴漢を働いていたとします。今作を見てそのようなことを考えるのは難しいのかもれませんが、可能性はゼロではありません。何度も言っている通り実際に彼が痴漢を行っていないと言い切れる材料は何一つありませんので。その場合、私たち視聴者が抱く本作における一般的な加害者と被害者という構図は逆転します。私たちが本作を見て抱く被害者にも加害者にも無責任ともいえる態度は、冤罪の被害者を救うどころか、実際に被害にあった人が不利益を被る可能性をも秘めています。あの見方によっては過剰とも取れるような捜査側の露悪的な態度や主人公に肩入れさせたくなる描写の数々は、視聴者に対してのこんな厳しい指摘も含まれているのではないでしょうか。

私は今作も12人の怒れる男も、描き方が違うだけで内包しているメッセージ自体は全く同じだと思っています。結局、「推定無罪」も「推定有罪」もただの言葉でしかないのです。前者にあって後者に無いもの、それは「真実をどこまでも追究しよう、追い求めようという揺るがない意思」です。きっと、その意思をわかりやすく端的に表した言葉がたまたま「推定無罪」だったというだけのものでしかないんだと思います。時間が無い、人手が足りない、そんなものはただの言い訳であり、法を振りかざす人間が言っていい言葉ではない。なんとなくで人を裁く事など決してあってはならないのだ。きちんとエンタメ性に富んだつくりにもなっている本作ですが、その裏には法というものに対するそんな厳格な姿勢が見て取れます。

この作品において、私たちが自分自身を投影するべき相手は主人公だけではありません。裁判員制度もある今、私たちは主人公を裁く立場になる事だって十分にあり得るのです(現在の裁判員制度では裁判員が軽犯罪を裁くことはありえませんが、人を裁くという意味においては両者に違いはありません)。日本人は一般的に右に倣えをしやすい民族だと言われています。自分がもしその場に立ったとき、周りの空気に流されずに自分の言いたいことをいえるだろうか。12人の怒れる男でのヘンリー・フォンダのように断固とした態度を取れるだろうか。本作を見ていると自然とそんなことを考えてしまいます。この作品は現代社会に生きる私たちに、そんな法を振りかざす者の心構えを教えてくれようとした作品なのかもしれません。

メッセージ性の高さでは12人の怒れる男に全く引けを取っていないと思います。
不満な点といえば、やっぱり少し上映時間が長かったくらい。

評価は「とても良い」です。
12人の怒れる男を未見の方には少々わかりづらい内容だったかもしれません。その点は申し訳なく思います。でも、今作を見た方はぜひこちらの作品も見ていただきたい。その上で両者の違いをぜひその目にしていただきたいと思います。


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