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[日本映画]天国と地獄: Twitter


読み仮名: てんごくとじごく / 英語タイトル: Heaven and hell
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1963年日本映画総合点2位/11作品中 1位<= =>3位



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最新作品評価

2011/10/28 とても良い(+2 pnt) by よっぴぃ
映画界の巨匠・黒澤明が贈る至極のサスペンスドラマ。幼児誘拐がテーマとなっており、子供が誘拐され身代金を受け渡すまでの前半、警察が少ない手掛かりをもとに卑劣な犯人を追い詰める後半、の二部構成となっている。

靴職人から叩き上げで大手靴メーカーの重役を務めるまでになった信念ある男・権藤(三船敏郎)は、靴に対する自分の考えに反発する役員たちを追い出すため、筆頭株主となり会社を牛耳ろうと一世一代の大勝負を画策していた最中、何者かから大切な一人息子を誘拐したという電話を受ける。幸い息子は何事もない様子で帰宅し、すぐに誘拐犯が息子と間違えて自分の雇う運転手の子供をさらっていたことが発覚したので、人違いなら犯人も諦めるだろうとその場は一旦落ち着くのだが、犯人はなんと権藤にとって赤の他人にすぎない子供をそのまま利用し、三千万(今の数億円相当)という破格の身代金を要求。ここからドラマが始まる。
他人の子供をさらい金をせしめるという行為は誘拐罪にならず重刑にはあたらないという法律のまさかの落とし穴。子供の命は確かに尊いがしかしそれはあくまで他人の子供、しかもこの機を逃せば筆頭株主どころか逆に自分が会社を追い出され路頭に迷うことになるという権藤の苦悩。
物語開始から4、50分の間はなんと権藤邸の大広間から一歩も舞台が動かず、電話越しの犯人の要求から展開される人間たちのやり取りのみで劇を成立させている。この点がまず素晴らしい。緊張感を僅かばかりも失わせない脚本の良さも冴えているが、画面の広さをフルに活かして様々な立場にいる登場人物を一つの画面におさめきる人物配置とカメラワークが圧巻。視覚的伝達力に関して類い希な関心と才能を持つ黒澤明の個性が序盤から爆発していることは特筆すべきものだろう。
さらにこの映画を語るうえで欠かせないのは、権藤と警察がまんまと犯人の術中にはまり、東京→大阪間を走る特急こだまのトイレの窓から三千万の入った鞄(これは骨身を削って財産を築いた権藤にとって命そのものである)を外に投げる僅か数十秒の身代金受け渡しのシークエンス。これは日本の数あるサスペンスドラマの中でも白眉と言えるもので、実際にこだまを数時間借りきって一発本番で撮影された映像はリアルな緊張感に溢れている。他人の子供のために自分の地位と財産の全てを投げ出し、無事解放された子供を見つけるや否や車から飛び出し、泣きじゃくる子供と熱い抱擁を交わす権藤の姿は、涙無しには観ることが出来ない、作中最高のハイライトだった。ここまではあくまで映画の前半に過ぎないが、緊張感の持続と劇構造の妙、ハイライトにおける感動の点から、私はこの前半部を最高に評価したい。

後半からは、物語の中心人物が被害者の権藤から主任警部の戸倉(仲代達矢)に移り、手掛かりをかき集めて犯人を捜し出す話となる。前半は声のみの出演だった犯人・竹内(山崎努)も登場し、戸倉たち警察の意地の捜査活動と竹内との駆け引きが物語の主体となる。
ここからの話も脚本を書くうえでの細かい考証や、後に「踊る大捜査線」で模倣される有名なシーン、ラストを飾る山崎努の圧巻の独白など、語り尽くせない魅力にあふれているのだが、前半に比べるといささかエネルギーに劣る。
これは、前半で英雄的な輝きを見せた権藤の姿に感化された戸倉たち警察が、「何としても犯人を逮捕する」という自分達の職務を遥かに超えて、「犯人はあまりに卑劣だ。何としても捕まえて死刑にしてやる」という感情的な行動を見せ、しかも犯人を死刑に追い込むためにわざと泳がせ罪を重ねさせるという行為に及ぶからだ。

正直、この作品の根底にある黒澤の正義感はやや偏りがあると思える。正義のために自分の財産を全て投げ出すブルジョワ(権藤)や、正義のためには自らが法律に取って代わろうとする国家権力(戸倉)が、卑劣な犯罪者を徹底的にやっつける内容には、普通ではあり得ない異常な行動を美化しすぎている気があり、観ていて辟易する人もいるかもしれない。私は前者の行動には大きな感動を得ることが出来たが、後者の行動は少しやり過ぎな印象を覚えた。
この映画は黒澤明の代表作であり、日本の現代サスペンス映画の原典とも言える作品には違いないのだが、その点だけが非常に気にかかってしまうのが残念だ。よって評価は「とても良い」。


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